呼と循ゼミナール
リウマチ性弁膜症は弁膜だけの疾患か?
小出 直
1
1東京大学第2内科
pp.71
発行日 1975年1月15日
Published Date 1975/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202715
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リウマチ性弁膜症の病態が必ずしも弁膜異常だけでは説明できないことは,かなり古くから気付かれていた。例えば,純型僧帽弁狭窄症の患者についてGorlin式で算出した僧帽弁弁口面積をNYHAの心機能分類と比べると,心機能の低下した例ほど弁口面積の小さい傾向があるが,心機能の異なる各群間には弁口面積値の分布のきわめて大きな重なりがある。心機能分類の代りに心拍出量を,あるいは弁口面積の代りに左房平均圧をおいても同じ結果がえられる。これに対して,病態を修飾する因子として古くから指摘されているのが心房細動と肺小動脈抵抗である。
しかし,これらの修飾因子を弁口面積と組み合わせても,なお病状の重篤度をすっきりと説明できるとは限らない。例えば弁口面積や肺小動脈抵抗に比べて病状の重い洞調律例があり,また洞調律で,かつ肺小動脈抵抗の増大していない症例に交連切開術を施こしても,病状改善のはかばかしくない場合がある。このような事態を説明するために,1950年代にHarvey, Ferrer,あるいはFlemingらによって用いられた言葉が"myocardial factor"で,暗に左室心筋障害を意味していたと思われる。
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