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講座
非穿通性心臓の外傷
Nonpenetrating Trauma of the Heart
谷口 興一
1
Kōichi Taniguchi
1
1東京医科歯科大学第二内科
12nd Dept. of Int. Med., Tokyo Medical and Dental University, School of Medicine
pp.719-729
発行日 1973年8月15日
Published Date 1973/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202522
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近年,交通輸送機関の高速度化や産業の高度機械化に伴ない,外傷に帰因する心臓,大血管の損傷が増加する傾向にある。心臓外傷には直接的損傷による穿通性のものと間接的損傷による非穿通性のものがある。前者の場合は通常容易に診断可能であるが,後者においては,外傷の時点で心臓損傷の存在や潜在する合併症の有無を見落すことが少なくない。穿通性心外傷についてはAris—totleの時代以前から論じられているが,非穿通性心臓外傷にかんする文献は17世紀になるまで見られない1)。Warburgら2)3)は胸壁の鈍性外力による非穿通性心臓外傷の発生について,貴重な報告を行なっているが,なお真の罹病率や死亡率は不明である。非穿通性心臓外傷が比較的稀であるという誤った考えの主な理由は,心筋の挫傷や外傷性心膜病変が比較的よく耐えうることや臨床所見の発現が一時的であるため,確認することが難かしいということによる4)。しかしながら非穿通性心臓外傷による続発症はしばしば重篤な転起をとる場合があり,それ故に外傷を受けた個々の症例について,心血管損傷の有無を注意深くしらべ,さらに重篤な合併症の存在やその効果的な治療について詳細な検討が肝要である。
一般的に外傷性心臓病といえば,外傷ないしは強力かつ異常な体動に帰因する心臓の解剖学的病変や機能障害も含むべきであろう。
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