巻頭言
臨床肺機能検査の普及を念願して
西本 幸男
1
1広島大学医学部第2内科
pp.757
発行日 1970年9月15日
Published Date 1970/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202182
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臨床肺機能検査は最近わが国においても次第に普及しつつあり誠に喜ばしいことである。これは過去十余年にわたる肺生理研究の急激な進歩が多くの医師に対し良い刺激となったためであろうし,また他方では肺機能セミナーが行なっているような啓蒙活動が漸く結実しつつあるといってもよいであろう。しかしながら肺機能検査を他の分野における臨床検査の程度まで普及させるためには,なお一層の努力が必要であると考えられる。とくに臨床肺機能検査においては目的にかなった検査体系の確立と,データー処理を含む検査法の改良が急がれなければならない。
そもそも肺機能検査を行なう目的は決して単一ではなく,大別すると,患者を対象として日常の診療に対し必要な情報を得ようとするもの,社会人を対象とし労働医学あるいはスポーツ医学などの立場から行なうもの,さらに大気汚染の生体に及ぼす影響の判断などの如く個人よりもむしろ集団としての結果を求めようとする場合などがある。これらに対してはそれぞれ異なった検査体系が用意されてしかるべきであろう。また検査法の種類はX線・RI・心カテなどを除き,従来成書に記載されているいわば狭義の肺機能検査だけを取りあげてみても,おびただしい数に達しているのであるから,これらの中より目的にかなったいくつかの検査法を選択しなければならない。ここでは胸部疾患の診療を目的として実施する肺機能検査に対しいささか私見を述べてみたい。
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