特集 呼吸機能の正常値
巻頭言
肺機能検査法の普及を念願して
和田 直
1
1広島大学医学部内科
pp.706
発行日 1966年9月15日
Published Date 1966/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201633
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肺疾患に対する診断諸法のうち,従来不可欠とされていたものの1つはレ線学的検査であったが,今日においては,肺機能検査がこれに加味されてその偉力を発揮しており,その結果が如実に診断面および治療面に表現されつつある。かつて肺結核が呼吸器疾患の主位を占めた時代においては,レ線検査が検査法の主役を演じたが,やがて化学療法の時代を迎えて肺手術が広く実施されるようになると同時に,肺機能検査が手術適応症の決定に活用されるに至った。しかしながら,肺機能検査のもつ真の偉力は,レ線検査では目的を達し難い肺生理の画を把握して,その障害度を決定することにより,至適の治療を実施することが可能になった点にあるといってよい。事実,近年大気汚染と関連して大をな問題となりつつある慢性気管支炎や慢性肺気腫のごときは,肺機能検査の実施により,はじめて研究が軌道に乗ったものといってよい。
このように肺機能検査は臨床上必要欠くべからざるものであり,わが国においてもその認識が高まりつつあるが,その蔭には東北大学中村隆教授・慶応大学笹本浩教授その他先覚者の涙ぐましい努力があったことを忘れてはならない。
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