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はじめに
心室は収縮終期においても,完全には空虚にはならないことは古くから知られており,いわゆるisometric relaxationの時期に心室内に残る血液の量が,残留血液量(ventricular, residual volume)である。したがって残留血液量は収縮終期容積(end-systolic volume, ESV)ともいわれる(図1参照)。
心室内残留血液量の生理学的意義は今日なお完全に解明されてはいない。古くは心拍出量を増加させるme—chanismに関与していることが考えられ,最近でも,その量は非常に少なく,わずか数回の心拍出を維持できる量にすぎないが,心内のblood reservoirとして急激なcirculatory blood supplyの変化に対処する役割をはたすといわれる。一般に残留血液量は心不全症例で増加傾向を示すことが知られており,心不全の徴候の1つと考えることは妥当であろう。
残留血液量に1回拍出量を加えたものは,拡張終期容積(end-diastolic volume, EDV)であり,その生理学的意義は甚だ大である。拡張終期容積は,心室のisometric contractionの時期に心室腔内にある血液量を意味しており(図1参照),拡張終末期の心室容積はend-diastolic fiber lengthとも関連して,Starling1)2)らのlaw of heartに示されるごとく,心のdynamic and metabolic activityを決定する重要な鍵となるものである。
心臓のvolumeを測ろうという試みは古くからなされ,はじめはin vitroで剔出心について心腔内を水で置換して直接に容積を推定することが行なわれた。in vivoではレントゲン写真より推定する方法が考えられ,一定の計算式をあてはめて求めるものであった。Lilje—strandら3)(1939年)の成績によれば,健康成人の心容積は700ml (372ml/m2)であるという。しかし,in vitro法で求めた心容積との間には,かなりのdiscre—pancyがあった。Nylin4)は生前と死後における心容積をレントゲン学的に測定し,心内残留血液量は死後に著明に増加することを見出した。しかし,これら心容積の古典的方法は心内容不責を推定するにとどまり,心室容積の測定にはいたらなかった。
一般に,残留血液量は,拡張終期容積から1回拍出量を差引いて求められ,その測定は拡張終期容積の正確な測定に帰結する。
1951年Bingら5),1956年以来Holtら6)7)8)により,indicator washout去を用いて心室内残留血液量を測定する方法が開発され,種々の改良をへて現在にいたっている。
また,in vivoにおける心容積測定の古典的方法であったレントゲン学的方法も,適当な造影剤の出現と器械の発達により,quantitative angiocardiographyへと発展した。1958年,Chapmanら9)は,biplane cine—fluorographyを用いて左室容積を測定する方法を発表した。つづいて1960年Dodgeら10),1961年Arvidsson11)によりbiplane angiocardiographyを用いて左室容積を測定する方法が,それぞれ独立して考案された。
今日,残留血液量など心室容積測定のstandard te—chniqueは,このquantitative biplane angiecardi—ographyとindicator dilution法の2つに大別できる。
心室など心内の容積は古くから体表面積と相関するといわれ3),一般に体面積で較正してml/m2BSAの単位であらわす(図2参照)。
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