巻頭言
陰に隠れた薬理作用
伊藤 隆太
1
1東邦大学医学部薬理学教室
pp.263
発行日 1969年4月15日
Published Date 1969/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202008
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動物実験をくり返す間に,作用が毎回確実に出るとは限らなかったり,一般に知られている作用のほかに,思いがけない変化が時折現われて,当惑してしまう場合がある。これを個体差とか,動物が弱って出なかったとか,麻酔条件の相違あるいは実験技術の不備として,片付けてしまってよいものだろうか。最近,数年間に経験したことから,説明が付かなければ,そのまま記載して,後日の研究に委ねるのが正しいのではないかと考えるにいたった。2つ例をあげてみよう。
〈例1〉サイアミン:脚気衝心に,サイアミンが奏功することが知られたころ,経口または皮下適用よりも静注が急場に応じうるのではないかと考えられた。しかし答はバラバラであった。曰く「劇的に奏功した」「すぐには奏功しなかった」「状態が急激に増悪して死亡した」と。
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