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ECGの解釈は,臨床上経験したECGデータの膨大な集積と,その病理所見や病的状態との関係から設定された基準にもとづいて行なわれてきた。これは,現在の臨床心電図学が,まったく,経験的な立場から,統計学的に処理されたデータによっていることを意味する。したがって,データのバラツキを検討する場合,集められたデータが正規分布をすること,抽出された標本が正しくその母集団を代表していることが,いつも前提となっている。しかし,標本自体の変動性について十分に考慮されない場合が多い。現在までに知られている変動因子が関与する程度を,個々の例について正確に定めることはむずかしいが,ECGのsamplingにかんするかぎり,つねに考慮しなければならない問題である。日常のECG解釈に用いられる分析法は質的性格が強く,経験的に,臨床像および病理学的所見との関係で価値づけられてきたことも変動因子の関与を大きくしている。データをきわめて正確に測定しても,得られたECGそのものに変動因子が内在していることを十分に理解しておかなければならない。データのバラツキを検討するまえに,データを客観的に読みとり,適切な方法で,できるだけ定量的に表現する必要がある。データの客観性を尊重しつつ,その変動性を検討し,それに基づくECGの判定基準を確立するため,不完全ながら,時間因子,時間による起電力の分布,起電力の大きさとその方向で定まる心ベクトル,およびventricular gradient (V. G.)1)2)などが,これまで検討されてきた。空間的表現であるVCGには多くの指標がとりあげられ,各瞬間ベクトル,空間的に総合した心ベクトルの大きさと方向,半面積ベクトル,極ベクトル,固有ベクトル,空間単一化ベクトル,空間的V. G.,および,空間速度心電図などが考えられている。今回は,ECGの変動性の問題を主としてとりあげる。
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