巻頭言
MEと医学教育
吉本 千禎
1
1北海道大学応用電気研究所
pp.619
発行日 1966年8月15日
Published Date 1966/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201620
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乗用車の数が非常な勢いで増加してくると心配になることは,人間の足腰が退行変化を起こしはしないかということだ。現に外国の一部ではそのような徴候がみとめられる。考え方によっては乗用車が大変便利なものであるという証拠になるわけであるが,では人間はどうすればよいかと戸惑うのでは困る。
ME,すなわち,メディカル・エンジニアリングが急激な勢いで発達してきた現在,前記の例のようなことをあらかじめ考えておく必要がある。MEが医学に提供するものは,客観化された新しい生体情報,便利な生体情報の処理法,自動診断,医療システムの改善などだけではなく,サイバーネティクスを利用して生物現象の理解を新たにし,バイオニクスは生体機能を単純化して説明する。このような情勢を放置しては,きっと医学が自己の足腰を気にしなければならない結果になりはしないかと心配になる。そこで医学がMEを完全に消化して本当の栄養とし,それによって平衡のとれた健康体になり,さらに将来への十分な予備力をそなえるためにはどうしたらよいかを真剣に考えなければ,せりかくのMEがかえって邪魔になる。そのために,まず第1にとるべきは医学教育のなかにMEをとり入れて,どのように消化するべきかを教えておくことではなかろうか。
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