ひとこと
MEと検査技師
阿部 裕
1
1阪大第1内科
pp.10-11
発行日 1974年7月1日
Published Date 1974/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543200498
- 有料閲覧
- 文献概要
情報獲得は認識のはじまり
近代医学はVirchowの細胞病理学に代表されるatomism,すなわち存在を不可分の単位にまで分解して,普遍的法則を見いだすという思想によって推進されてきた.それにも関わらず診断学は前近代的混迷のなかに取り残されている観がある.この改善のためには疾病の症状から検査所見までのあらゆる情報が,単位に置き換えられうることを承認せねばならない.これらが電子計算機や情報科学理論の力を導入する前提になるからである.
Gottfried Wilhelm Leibnitz(1646〜1716)は哲学者,数学者であると同時に機械工学の面でも貢献があり,後半生は政治家としても手腕をふるったと伝えられている.彼の最大の事業のひとつは微分積分法の発見で,微分記号dや積分記号∫もその創案であるが,Leibnitzの思想は,形而上的な存在についても究極の要素として単純実体(monad)を仮定する単子論(monadologie)によって代表される.このatomismが普遍学,普遍的記号法,普遍的言語,論理計算など,彼の学術的貢献の根源であり,さらにはベルリン,ウィーン,デュッセルドルフ,ペテルスブルグのアカデミーを組織し,世界アカデミーの設立を構想させたゆえんでもある.現代の診断学を科学として向上させるには,atomismが普遍性のひとつの顔であることを認識して,あらゆる神秘に分析の手を進めることが必要であろう.彼の偉業をたたえる記念碑の銘文には,"すべての事柄を表すには,単位と空白さえあればよい"ということばが記され,Leibnitzの時空を越えた洞察力を示している.
Copyright © 1974, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.