巻頭言
疫学と気道閉塞性呼吸器疾患
外山 敏夫
1
1慶応大学医学部衛生学教室
pp.907
発行日 1963年12月15日
Published Date 1963/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201269
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疫学というと伝染病の統計と思つている人がいまだに少なくない。もとの言葉であるEpidemiologyにはそのような意味はない。人の生活集団の中に起る種々の事象を研究する学問ということで,現在,西欧諸国では伝染病のみならず,非伝染性疾患をも生活集団のレベルで取扱うときにとられる一つの科学とされている。しかしソ連においては依然として伝染病だけについては狭義に解釈されているようである。
疫学の利用として現在理解されていることは,地域社会の健康,疾病等の集団的地域診断,それにもとづく種種の科学的又は行政的対策方法の設立,種々の疾患,又は健康の臨床像を明白にさせること,集団的な不明の疾患症候群から病名を同定すること,健康又は疾病の原因を探究すること,地域社会の健康や疾病の歴史的な起伏変遷を明らかにすること,ある個人の疾病や災害に対してそれの生命に対する危険度を推定すること,等々数えれば中々きりがない。
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