Japanese
English
原著
上行もしくは弓部大動脈癖に対する切除移植に関する研究
Studies on the Resection and Transplantation of the Ascending Aorta or the Aortic Arch for Aneurysm.
鈴木 昭彦
1
A. Suzuki
1
1東京大学木本外科教室
1Dept. of Surgery, Tokyo University School of Medicine
pp.435-446
発行日 1961年6月15日
Published Date 1961/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200997
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I.緒言
大動脈瘤の治療方法として,大動脈瘤切除,代用血管移植という根治的治療法は今日では日常普通に行なわれる方法となつて来てはいるが,胸部大動脈なかんずく上行又は弓部大動脈に対する切除移植手術には今日なお多くの困難な問題が残されている。その問題の中心となるものは無名動脈よりも中枢側の大動脈を遮断することによりひき起される様々の障害,例えば心臓流出路遮断による左心室への非常な負荷,脳.脊髄など中枢神経系の阻血による障害などであり,この問題の解決には非常な困難を伴なうため今日まで充分な解答が与えられることなく過ぎ去つて来た。中極神経系の阻血,シヨツクの問題は下行大動脈の遮断の際にも勿論起り,Cooley氏等は遮断時間の短縮,体外循環の使用1)などによりこれを防止しようとしているが,著者は教室の宮本のいわゆる「脳脊髄液吸引法2)」により一応の解決を見たものと考えている。
さきに挙げた上行,弓部大動脈遮断により起る心臓流出路遮断による左心室への負荷,中枢神経系の阻血による障害を解決する方法としては,理論的には大動脈を遮断しその移植再建手術が行なわれる間,一時的にせよ心臓流出路をつくり左心室への負荷を除いてやればよいことになる。そしてその実際上の方法としては遮断中体外循環装置を利用する方法,上行大動脈から下行大動脈へ一時的Bypassをおいてやる方法などが考えられる。
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