巻頭言
論文発表型式の問題点
橋本 虎六
1
1東京大学
pp.879
発行日 1959年10月15日
Published Date 1959/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200818
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研究が一つのまとまりがついた時,これをどの様に発表するかは研究者各自に夫々の考案があろうと思う。「要を得て簡なる事」を最善とする科学論文にあつては表題,研究の動機,成績のまとめと吟味,総括という型式は大方の研究者の踏襲されている所である。時代と共に研究論文の数が増加して来た間の幾多の経験から割り出された最も簡潔な科学論文の型式としてこれ以上のものがないからであろう。欧米の有力学術誌の編集委員会の論文審査は極めて厳格になり又年々創刊される学術誌も好論文を集めようとしている。更に又,より広い世界的規模で研究成果の集積を行う事により,能率的研究活動の上に重要な役割を演じているAbstracts誌ですら,発表論文の全部に渉る掲載が不可能になつて来た程の論文数である現況に於て独創性のある論文の抄録を選択的に集めるべく最大の努力を払う様になつて来た。従つて論文の「要を得て簡なる事」は当然の事であろう。一歩でも遅れて先入の業績の繰返えしと見做されては致命的な負けである以上,Abstracts誌の重要性は益益重視されつつある。
欧米事情を見ると雑誌編集責任者も掲載論文がAbstracts誌に載るべく,abstractし易い様にabstractorに理解され易い様に意識的な努力を払つて来ているのが最近の傾向である。
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