Japanese
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特集 遠隔成績よりみた早期胃癌
早期胃癌における術後再発型式とその問題点
Relapse of early gastric cancer and its prevention
岩永 剛
1
,
古河 洋
1
,
神前 五郎
2
Takeshi IWANAGA
1
1大阪府立成人病センター外科
2現大阪大学医学部第2外科
pp.29-35
発行日 1976年1月20日
Published Date 1976/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407206415
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I.早期胃癌と進行胃癌の術後生存曲線並びに死亡原因
胃癌も,癌がまだ胃粘膜固有層(m)あるいは粘膜下層(sm)にとどまつているような早期胃癌の間に手術をすれば,術後の遠隔成績も良好である.実際にわれわれの施設で1973年末までに手術を行なつた早期胃癌510例の術後10年累積生存率は図1の如く72.6%で,他の胃癌症例にくらべて格段の差をもつて高い生存率が得られた.しかし,この図をもう少しくわしく観察すれば,他の進行癌は術後2〜3年までは生存曲線が急激に下降するが,その後は徐々に下降するのに比べて,早期胃癌症例は術後5年経つてもなお生存曲線が下降し続けている.それでは,胃癌の進行程度によつて術後死亡原因に差があるのであろうか.図2にこれをみると,比較的早期の胃癌であるstage I,IIの症例は他病死が多いのに対して,進行胃癌であるstage III,IVでは癌再発が高率となる.また,早期胃癌症例のうち術後死亡した59例の死因別の頻度とその死亡時期を表1に示した.全死亡のうち,胃癌再発と残胃初発癌の両者を含めた16例(27%)が最も多く,次いで脳・心・血管障害13例(22%),他臓器癌11例(19%),肝疾患8例(14%)が多かつた.これら死因別に死亡時期をみると,各死因とも術後7年まではどの時期においてもほぼ同数の死亡例があつた.すなわち,早期胃癌症例では術後5年経過してもその生存率が下降し続けるのは,他病死が多いことと共に,5年経過しても癌再発が起こつてくるためと思われる.
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