巻頭言
医学研究と記載
上田 英雄
1
1慈大
pp.75
発行日 1958年2月15日
Published Date 1958/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200587
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1カ月程前に毎月寄贈を受けている「医学と生物学」誌の目次を何気なくみていると,心臓の副交感神経支配に関する研究(その4)として「温血動物の副交感神経性心臓抑制神経に属する末梢介在神経細胞の所在について」と記されているのに目が引きつけられた。幸塚嘉一・内藤博江両氏の労作である。筆者は例年生理学会総会には出席していないのでよく知らなかつたが幸塚氏は末梢自律神経については広島の西丸教授と列ぶ権威ある生理学者の由である。11月29日に大阪大学で催された第4回国際自律神経談話会に出席し初めてその風貌に接し得たが熱意ある立派な学者のように見受けられた。その本文中に「また特に迷走神経心臓枝に属する介在神経細胞について検討した報告は少く,かつそれらは主として組織学的証明によるものであつて,いずれも機能的根拠を欠いている憾みがある」としている。しかし文献中にあげてある現在東京逓信病院の結核科長をしている畏友藤田真之助博士の「迷走神経心臓線維の中枢並にその介在神経節について」の論文の517頁中段には次のように書いて礼をつくしてある。「更に当教室における上田氏102)がニコチン法によつて迷走神経心臓線維の介在神経細胞の一部が節状神経節に存在することを推定した……」。この方面の聖書のようになつている呉・冲中両教授共著の"自律神経系"総論編には第4版以来これに関する記述があり,第5版238頁,第6版321頁に次の記載がある。
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