巻頭言
脳血管構築の特異性とその循環障害によせて
勝木 司馬之助
1
1九州大学
pp.65
発行日 1957年2月15日
Published Date 1957/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200458
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近時脳循環に関する研究はKety & Schmidtの新しい測定方法の発見以来目醒ましく進展して来たが,これは脳全体の血行を対象としたものである。
脳動脈はいう迄もなく内頚動脈系と推骨動脈系とから構築され,それが脳底部で合してWillis環を形成しているのであるが,この二大動脈系の潅流する領域は正常では極めて撰択的に分れていて,高等な機能を司る大脳は主として内頚動脈系,生命と直接不可分の関係にあると考えられる尾側脳幹部は主として椎骨動脈系から栄養されているのである。又自律神経の最高中枢とされている視床下部はこれ等の異つた二つの動脈系から分布を受けているが,興味あることには一定の動脈は一定の視床下部の核群を養つているといわれ,生理学的にも両動脈系の血流が後交通動脈の一定の部位即dead pointで互に混ずることなく接触していることが証明されている。而してその機能に於ても両動脈系の間には明かな差異が認められる。色々な薬物を頚動脈に入れた場合と椎骨動脈に入れた場合とではその反応に顕著な差が現われることは多くの実験で証明されたところで,これは両動脈系の支配領域の機能の差に由来するものであろう。シヨツク時の血流についても両者の差があげられている。
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