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はじめに
社会の高齢化または超高齢化が進んだ結果,若年者に対して標準的に行われている冠血行再建術が超高齢者に対しても行われることが稀でなくなってきた.これまで高齢者の虚血性心疾患に対する侵襲的治療が一般に敬遠されてきたのは,合併症を多く持つハイリスクな患者が多く,冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention;PCI)や心臓外科手術後の死亡率が高いと考えられていたためである.しかし,橈骨動脈アプローチ法を用いたPCIにより高齢者でも安全に冠血行再建ができるようになった.これは超高齢者に対しても大きな恩恵をもたらした.また,認知症や合併症が少ない患者が対象ではあるが,オフポンプ冠動脈バイパス術(off-pump coronary artery bypass;OPCAB)が広く行われるようになったことで,超高齢者に対する心臓外科手術も比較的安全に行うことができるようになった.ここで「超高齢者」とは老年医学で言うところの85歳以上ではなく,80歳以上とする.
近年,超高齢者の治療選択に関するエビデンスが少しずつながら得られてきた.超高齢者でも,ADLが保たれておりひどい認知症や合併症がなければ,急性冠症候群(acute coronary syndrome;ACS)と診断された場合にはPCIの適応を常に考慮し,必要ならば早急に専門医に紹介,転送することが大切である.平均余命の延長を考えると,その後には虚血性心疾患の二次予防のための最適薬物治療を超高齢者にも行うべきであると考える.一方,超高齢者を含む高齢者の慢性心筋虚血すなわち狭心症の治療の原則は,生活の質(quality of life;QOL)の保持であるが,高齢者においては若年者よりも侵襲的治療により予後が有意に改善する可能性が示唆されている.本稿では現在得られているエビデンスを整理し超高齢者の冠血行再建術の適応について検討したい.
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