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新規経口抗凝固薬におけるアピキサバンの特徴
経口抗凝固薬としてはワルファリンが唯一の選択肢である時代が長らく持続した.大部分の症例において,ワルファリンは安全に使用できるが,一部の症例ではPT-INRの計測を頻度高く施行しても安定した抗血栓効果を得られない問題があった.ワルファリンは肝臓における凝固因子の機能的完成を阻害する薬剤である.このため,肝臓の代謝酵素の遺伝子多型により個人毎に必要投与量が異なる1).また,肝臓は食事,薬剤などの代謝を行う臓器であるため,肝臓の蛋白合成に寄与するワルファリンの効果は日々の食事,併用薬などにも影響を受ける.ワルファリンの適正な使用量は個人毎に日々変動するためPT-INRの定期的計測による薬効モニタリングが必須であった.モニタリングをせずとも標準的な抗血栓効果を得られるとして新規経口抗凝固薬が開発された2).
欧州,米国など世界を広く見渡すと,最初に臨床使用可能となった新規経口抗凝固薬はximelagatranであった.ximelagatranは血液凝固の最終段階に近いトロンビンの酵素機能を選択的,可逆的に阻害する薬剤である.欧州にて股関節,膝関節置換術後の深部静脈血栓症の予防,治療を適応として認可承認がなされた.しかし,市場の大きな非弁膜症性心房細動における脳卒中予防試験において,ワルファリンに対する非劣性を示したものの3,4)肝機能障害などの問題により適応取得に至らなかったため,小さな適応症のみでは商売にならないとのことで市場から撤退した.次いで,同じくトロンビンの酵素機能を阻害するダビガトランの開発が行われた.非弁膜症性心房細動1万8千例以上を対象としたRE-LY試験は,ワルファリンとダビガトランの比較はオープンラベルで行われた5).それでも,PT-INR 2~3を標的としたワルファリン群に比較して,ダビガトラン群の脳卒中発症率が低容量にてほぼ同数,ダビガトラン高容量では少なかったとのことで広く使用されるようになった.ダビガトランは凝固カスケードの最終段階のトロンビンの酵素作用を阻害する.経静脈薬ではアルガトロバンという抗凝固薬が日本では長らく使用されていたが,ダビガトランはアルガトロバンに類似した特性を有する薬剤である6).抗トロンビン効果には可逆性があるため,急性冠症候群のように局所の血栓性が著しく亢進した病態ではダビガトランの血栓形成阻害効果は効率的ではない7).RE-LY試験でもワルファリン群に比較してダビガトラン群では心筋梗塞の発症数が多いことが問題と認識された.
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