Japanese
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特集 肺癌個別化治療におけるバイオマーカー
総論
Biomarkers in Lung Cancer Therapy for Individual
瀧川 奈義夫
1
,
木浦 勝行
2
Nagio Takigawa
1
,
Katsuyuki Kiura
2
1川崎医科大学附属川崎病院総合内科学4
2岡山大学病院呼吸器・アレルギー内科
1Department of General Internal Medicine 4, Kawasaki Medical School
2Department of Respiratory Medicine, Okayama University Hospital
pp.1207-1213
発行日 2012年12月15日
Published Date 2012/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404102104
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はじめに
癌の遺伝子異常には,点突然変異,染色体転座による融合遺伝子,およびゲノムのコピー数が増加する遺伝子増幅などがあるが,特に発癌および進展に重要な機能変化をもたらす遺伝子をoncogene driverと呼ぶ.癌遺伝子依存性(oncogene addiction)とは,癌細胞が特定の遺伝子にその生存を強く依存している状態である.例えば,活性型上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor;EGFR)遺伝子変異を有する細胞はEGFRシグナルの増強で癌化あるいは進展し,このシグナルを止めることで発癌が抑制され,また癌細胞は死滅してゆく.すなわち,この肺癌はEGFR遺伝子にaddictionしているという.肺癌は10数年前までは,顕微鏡レベルで大きく4つ(腺癌,扁平上皮癌,大細胞癌,小細胞癌)に分類され,前3者は非小細胞癌(NSCLC)として一括りで治療されていた.それを遺伝子レベルでoncogene driverを診断し,それに対する特異的な治療を行うことが,バイオマーカーに対する個別化治療の本来の意味であろう.oncogene driverではないが,チミジル酸合成酵素の低いNSCLCへのpemetrexed,あるいはERCC1低発現のNSCLCへのプラチナ製剤の有用性なども広義のバイオマーカーと考えられている.
本特集は,総論としてoncogene driverを中心に肺癌治療の動向について触れ,各論で世界を代表する日本の研究者にそれぞれの専門分野を論じていただく.
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