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特集 インフルエンザウイルス感染症の最新の話題
インフルエンザ流行前の社会的対策
Social Preparation before Influenza Pandemic
小林 治
1,2
Osamu Kobayashi
1,2
1杏林大学保健学部看護学科医療科学Ⅱ研究室
2杏林大学医学部付属病院感染症科
1Kyorin University Faculty of Health Science, Department of Nursing, Medical Science Institute
2Kyorin University Hospital, Infectious Disease Department
pp.993-999
発行日 2011年10月15日
Published Date 2011/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101801
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インフルエンザ
第一次世界大戦最中の1918年,スペインかぜは,AIDSが24年かかった死亡数を僅か24カ月で,ペストが1世紀かかった死亡数を僅か1年で上回ったことから,その病原性と伝播力の高さが世界中を震撼とさせた1).これは有効な感染防御方法やワクチン療法,治療薬を持たない時代の話であり,インフルエンザが飛沫感染で伝播するウイルス感染症であり,有効なワクチンや抗インフルエンザ薬といった感染症制圧のための有効手段を持つ今日では考えられない話である.
元々,インフルエンザは家禽類の疾患とされているが,その後,豚やウマの他ヒトにも感染することが判明した.初めてヒトにパンデミックをもたらしたインフルエンザはスペインかぜとされているが,その後,ソ連かぜ(H1N1)と香港かぜ(H3N2)の二つのA型,またA型とは血清型が異なるB型インフルエンザが毎年冬季に流行するようになり,これらを季節性インフルエンザと呼称する.また,1997年香港において,家禽類への種特異性を有するH5N1インフルエンザウイルスの集団感染が,その後もH7やH9インフルエンザの散発的なヒト間伝播が,また2002年以降は再びアジア地域を中心にH5インフルエンザの散発的な発生が報告されるなどの新規インフルエンザも発生している.2009年3月,メキシコに端を発した豚インフルエンザウイルス(H1N1 pandemic virus;H1N1pdm)感染症が世界中に伝播したことは記憶に新しいが,その後,09/10および10/11シーズンではこれが流行の主体となった2).
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