Japanese
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綜説
改正臓器移植法をめぐって
On Revised Organ Transplant Law
西垣 和彦
1
Kazuhiko Nishigaki
1
1岐阜大学医学部附属病院第二内科
1Second Department of Internal Medicine, Gifu University Hospital
pp.605-610
発行日 2011年6月15日
Published Date 2011/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101721
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はじめに
心臓移植は,従来の治療法では救命ないし延命の期待が持てない重症心不全を対象患者にして行われ,QOLの面からも医療経済効率的にも優れた,世界的に既に認知・確立された標準的治療法である.
しかし,これまでわが国で行われてきた心臓移植は,極めて厳しいドナー選択の壁に阻まれて,ごく少数例しか心臓移植が行われず,専ら欧米の善意にすがった渡航心臓移植が主であった.この現状に対して,どうしても抜本的な臓器移植法の改正が必要となり,国際標準に準拠した改正臓器移植法の成立が強く求められるようになったが,度重なる政権の交代なども影響し,法案の審議にさえも入れなかった時代が長く続いた.ようやく旧臓器移植法成立後12年を経過した2009年になって,渡航移植に対する海外からの批判も追い風となって,ついに改正臓器移植法が成立した.
この新たな改正臓器移植法が2010年7月より施行されるにあたり,日本循環器学会心臓移植委員会では,わが国の心臓移植の体制や今後の日本循環器学会心臓移植委員会活動の関わりについての基本的姿勢をまとめた「わが国における心臓移植体制と今後の日本循環器学会心臓移植委員会活動の在り方に関する提言」を昨年発表した(http://plaza.umin.ac.jp/~hearttp/).
本稿では,改正臓器移植法成立以前の状況と改正臓器移植法の骨子,そして施行後の状況を概説した後,日本循環器学会心臓移植委員会幹事であり,かつ循環器内科医としての立場から,この日本循環器学会心臓移植委員会からの提言も併せて概説し,改正臓器移植法施行をめぐる諸問題に対しどのように対処していくのかも展望する.
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