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はじめに
心肺停止患者に対しては直ちに心肺蘇生法(cardiopulmonary resuscitation;CPR)を実施しなければならない.心肺蘇生の一環として特に重要な要素が心臓マッサージとAEDであろう.
CPRは心肺停止発生後できるだけ早期から開始し,以後何らかの治療により自己心拍が再開するまでの間,絶え間なく行う.市民による心肺蘇生はchain of survivalの最初の輪であり,最も重要である.しかし,本邦におけるbystander CPR施行率は必ずしも良好ではない.ウツタイン大阪の報告では標準的CPR施行率は1998年が19%,その後徐々に増加し2006年には36%となったが,約2/3の患者がbystander CPRを受けていないことになる.これは,人工呼吸を含む心肺蘇生法の煩雑さ,および口対口人工呼吸に対する敬遠が理由の一端とも考えられる.
2004年に一般の人がAEDを使えるようになってから6年が経過した.心停止を目撃した市民がAEDを使用した件数は2005年の46件,2007年は287件と2年間で6倍に増加している.また,市民がAEDを使用した場合の1カ月後の生存率は42.5%で,使われなかった場合の9.7%に対して4倍の効果との報告がある.一方で,AEDが使用された件数は,市民に心停止が目撃された全体の件数のわずか1.5%(287件/19,707件)に過ぎない.また,AEDは丸川らの報告1)によれば,2009年12月現在,設置台数は27万2,020台で,その内訳は医療機関が60,132台,消防機関が7,964台で,その他を公共施設など一般市民が使用できるAED(public access defibrillation;PAD)とすると,約20万台となる.この普及速度が早いか遅いかは判断できないが,すべてのAEDが有効に使われていると言えないのは事実であろう.
これは,設置場所の問題に加え,市民へのAEDを含む救命講習の普及が十分でないことが考えられる.
そこで本稿では,AEDを含む簡易救命講習への工夫について述べる.
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