Japanese
English
特集 AEDを検証する
スポーツ現場におけるAEDの活用
The Utility of AED in Sports
武田 聡
1
Satoshi Takeda
1
1東京慈恵会医科大学救急医学講座
1Department of Emergency Medicine, Jikei University School of Medicine
pp.1103-1112
発行日 2010年11月15日
Published Date 2010/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101573
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はじめに
2002年11月21日午後3時50分頃,高円宮殿下はカナダ大使館でロバート・ライト駐日カナダ大使らとスカッシュをされていた最中に突然倒れられ,心停止となった.午後3時53分には東京消防庁に救急通報が入り,現場では必死の心肺蘇生が開始された.救急車が午後3時58分に大使館に到着して,電気的除細動が行われたが,自己心拍は再開しなかった.午後4時22分,救急隊により救命処置が継続されながら病院に搬送され,その後も可能な限りの治療が施されたが,不幸にして午後10時52分,お亡くなりになられた.その原因は心室細動だった.まだ47歳という若さで日常スポーツも非常に活発にされて元気だった殿下が突然お亡くなりになられたということで,社会に非常に大きな衝撃を与えた.もし,スカッシュを行っていた大使館にAEDが配備されており,より早期に(救急車が来る前に)電気的除細動が行われていたら,高円宮殿下は救命されていたかもしれないと考えると,非常に残念でならない.ただ,この事件が報道で大々的に取り上げられたことにより,日本において一般市民へのAED使用が容認される大きな転機となったことは間違いない.
この事例もそうであるが,スポーツ現場での心停止は目撃されることが多く,特に心室細動の頻度が高いためAEDが非常に有効であり,このため救命できる可能性が高い.スポーツの危険性は,運動強度が高い競技スポーツに発生頻度が高いとは限らず,一般市民スポーツにおいても突然死が報告されており,注意が必要である.
本稿ではスポーツ現場での突然死の現状,その原因,そして対策について述べる.
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