Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
学生向けの医師国家試験対策本を紐解くまでもなく,不明熱での鑑別診断を筆頭に,感染性心内膜炎(infective endocarditis;IE)は医療現場での重要性認識がますます求められている.抗菌薬をはじめとする感染対策が充実した現況でさえ,その発症率や死亡率はここ20年減少する気配さえない1)からである.その背景の一つとして,症状や徴候が多岐にわたり担当領域が多方面に及ぶため,IEを鑑別診断として拠出すること自体がときに困難なことが挙げられる.
図1は,1994~2009年の約15年間に当科で確定診断された連続85名のIE例を,初期診断医の専門分野に基づいて分類したものである.ここで注目すべきは,循環器専門医に初診した症例はわずかであり,内科系プライマリケア医ならまだしも,内科系以外の他科専門医にて診療を開始された症例が少なからず存在する点である.図1でのB群に相当するが,群内で最も多かった患者の愁訴は腰背部痛であり,その際の疾病管理は整形外科医が主軸となっていた.実はこの全例に,化膿性脊椎椎間板炎(pyogenic spondylodiscitis;PSD)が合併していたのである.
IE例に合併するPSDに関しては,MEDLINEをはじめとする論文検索を行っても症例報告どまりがほとんどで,一定の見解が導けるようなエビデンスは皆無に等しい.それを反映してか,内外のIE診療ガイドライン2,3)のいずれにさえ塞栓症としてのPSDは全く触れられていない.しかし,これまで極めて稀と考えられてきた本病態であるが,IE発見の糸口として本症の重要性を認識すべきであり,現時点で得られる情報をここで整理してみたい.
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.