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はじめに
わが国の補助人工心臓(VAD)治療は1980年に三井記念病院で開心術後体外循環離脱困難(postcardiotomy heart failure;PCHF)症例に東大型補助人工心臓が使用されたことに始まる(図1)1).初期の補助人工心臓治療の主な適応は開心術後心不全(主として体外循環離脱困難)であり,手術侵襲からの自己心機能の回復を目的としたものである.1992年に心臓移植へのブリッジ(bridge to transplantation;BTT)を目的として埼玉医科大学で東洋紡VADが拡張型心筋症例に植込まれ42日の補助が施行されたがブリッジには成功しなかった.翌1993年に大阪大学からテキサスに渡航し,150日のVAD補助の後に心臓移植された16歳男子症例が最初のBTT成功例である.心臓移植適応のない末期的心不全症例に対して人工心臓によって長期生存を目指す治療をDestination Therapy(DT)と呼ぶが,1980年に実施された完全置換型人工心臓(total artificial heart;TAH)であるJarvik-72)や,2001年に実施されたAbioCorの臨床試験3)もDTを目指したものであった.しかしながら,TAHによるDT治療はいずれも成功せず,むしろ左心補助人工心臓(LVAD) を用いたBTT臨床治療成績向上のなかから,DTへの展望が開かれてきた.
2001年に発表されたREMATCH(Randomized Evaluation of Mechanical Assistance for the Treatment of Congestive Heart Failure)study4)の結果(図3),内科治療と拍動流植込み型VAD(HeartMate VE)治療の前向き無作為割付け比較試験により内科治療に対してHeartMate VE LVAD治療が優れていたため,2002年にFDAがHeartMate VEのDT適応を承認したことに始まる.米国ではその後HeartMate IIのDT臨床治験が実施され,HeartMate VE LVADとの比較で圧倒的に優れた治療成績が達成され2009年の米国心臓学会(AHA)に報告された5).2010年1月にHeartMate IIのDT適応も承認された.
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