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はじめに
COPDを疑う兆候の一つが,咳嗽・喀痰である.喀痰は出ないと患者が話す場合でも,COPDは肺胞構造における気腫病変と,末梢気道・中枢気道の炎症性気道病変の双方から構成されているので,喀痰産生は健常人よりは増加していることが想定される.健常人の場合,気道分泌物(喀痰)は,Goblet cell(杯細胞)と気管支腺(粘液細胞と漿液細胞)から産生され,その成分の一つであるムチンは,MUC(mucin)5ACとMUC5Bが主である(図1)1).COPDおよび喘息では,気道上皮細胞障害,杯細胞過形成,粘液細胞増加,気道上皮下の炎症などが生じ,気道分泌物の性状の変化が起こり,ウイルスおよび細菌感染が起こりやすい病態に陥っていると考えられる(図2)1).
このなかでも,喀痰が多い症例ではCOPDの進行が早い,すなわち経年的な閉塞性換気障害の進展が大きく,また増悪による入院回数も多いと報告されている2).特にこのような症例では,気道粘液の分泌を減少させること,あるいは気道粘液の性状を変えて,より喀痰を出しやすくすることが必要になると考えられる.喀痰調整薬として使用されている薬剤は粘液の性状を変化させるのに役立つと考えられているが,近年,この喀痰調整薬には,抗炎症作用,アンチオキシダント作用など,本来の喀痰調節作用以外の作用もあることが明らかになってきている3~7).
マクロライド系抗生剤は,抗菌作用と抗炎症作用を併せ持っている.抗炎症作用は,抗菌作用を期待できないような低濃度でも認められており,抗菌作用とは異なる作用機序が推定されている8~10).
COPDにおける粘液過分泌の制御は,COPD増悪の抑制につながる.喀痰調節薬およびマクロライド系抗生剤には,これらの作用が期待できる(図3)1).さらに,ウイルスの気道上皮への感染制御(エントリーブロッカー)としての作用も期待できる.
本稿では,COPD治療薬としての喀痰調節薬とマクロライド系抗生剤に関して,これまでの大規模試験の結果を中心に考察を加える.
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