Japanese
English
綜説
変性蛋白の測定
Measurement of Denatured Proteins
相澤 健一
1
,
鈴木 亨
1
Kenichi Aizawa
1
,
Toru Suzuki
1
1東京大学大学院医学系研究科ユビキタス予防医学講座
1Department of Ubiquitous Preventive Medicine, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo
pp.723-728
発行日 2009年7月15日
Published Date 2009/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101297
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はじめに
動脈硬化は多因子が関与する複雑な病態である.最近,社会的にも注目を浴びるメタボリック症候群を背景として発症する心血管疾患などの生活習慣病は,発症前に非常に長い潜伏期間を有すが,この間に経年的な蛋白質の変性病態が進行する.このように,長い潜伏期間における蛋白質の酸化修飾・変性は,疾患発症において中心的な役割を果たす.過去約十年における基礎研究の発展により動脈硬化の過程に関与する様々な変性蛋白が明らかになり,心血管疾患の病理進展の背景に対するわれわれの理解は深まった.なかでも,低密度リポ蛋白質(low density lipoprotein;LDL)の酸化変性は動脈硬化病変の形成に中心的な役割を有すると考えられる.動脈硬化形成における酸化LDL仮説により,粥腫発生の初期に最も重要なイベントは脂質の酸化であることが示唆されている.このことは酸化LDLがその中心的な役割となっていることを意味する.酸化LDLは血管内皮細胞障害や,細胞接着因子を発現させ,その結果,白血球をリクルートし,血管壁に留置する.すなわち,泡沫細胞の形成と同様な作用を示すなど,多様な生物学的活性を有する.最近,末梢血中の酸化LDLの測定法が開発され,臨床現場でも利用可能となった.酸化LDLは実際に心血管疾患との高い相関が示されるなど,臨床的意義が明らかにされつつある.
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