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コレステロールトランスポーター阻害薬をめぐる最近1年間の話題
[1]小腸におけるコレステロール吸収のメカニズム
血中コレステロールはLDLなどのリポ蛋白の中に組み入れられて運搬されているが,その由来として,小腸から吸収される食餌由来のもの(約400~500mg/日)および胆汁由来のもの(約800~2,000mg/日)と,肝臓において合成されるもの(約400mg/日)から成る.コレステロールはこれまで小腸において吸収されると考えられてきたが,その詳細な分子機構は不明であった.米国シェリング・プラウ社によって開発されたエゼチミブは小腸におけるコレステロール吸収の阻害薬であり,2002年に欧米で発売されたが,エゼチミブの作用機序は不明であった.しかし,その後の解析によって,Niemann-Pick C1の類縁種として確認されたニーマンピックC1Like1(NPC1L1)が小腸壁のコレステロール吸収過程に関与し1),エゼチミブはNPC1L1との結合により食事由来および胆汁由来のコレステロールの吸収を阻害することが解明された.NPC1L1は主に小腸細胞の刷子縁膜に存在し,NPC1L1欠損マウスではコレステロール吸収量が著減していた.エゼチミブは野生型マウスのコレステロール吸収を抑制したが,NPC1L1欠損マウスのコレステロール吸収はエゼチミブを投与しても抑制されなかったことから,小腸でのコレステロール吸収にはNPC1L1が関与し,エゼチミブはNPC1L1と結合してコレステロール吸収を抑制すると考えられた.
現在,考えられている小腸におけるコレステロール吸収のメカニズムは図1に示したようになる2).食餌由来および胆汁由来のコレステロールは界面活性剤である胆汁酸の働きでミセル化され,その約50%がNPC1L1によって小腸上皮で吸収される.胆汁によってミセル化されていないコレステロールは吸収されないと考えられる.このようにして吸収されたコレステロールは,アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ2(ACAT2)によって脂肪酸が結合し,コレステロールエステルとなって,TGとともにミクロソームトリグリセリド転送蛋白(MTP)の作用でカイロミクロンにアセンブリーされ,リンパ側へと分泌されるが,一部のコレステロールや植物由来コレステロールはABCG5/ABCG8の作用により腸管腔側へ再排泄される.ABCG5/ABCG8遺伝子の異常は血液中や組織への植物由来コレステロール(シトステロール,カンペステロールなど)の過剰な蓄積を起こし,シトステロール血症という極めて稀な遺伝疾患を発症させる.本症では皮膚やアキレス腱などの黄色腫,早発性の動脈硬化性疾患を合併しやすい.
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