Japanese
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特集 心筋再生と心筋保護
ES細胞による心臓再生の可能性と課題
Perspective on ES Cells and Cardiac Regeneration
森崎 隆幸
1
,
日高 京子
1
Takayuki Morisaki
1
,
Kyoko Hidaka
1
1国立循環器病センター研究所バイオサイエンス部
1Department of Bioscience, National Cardiovascular Center Research Institute
pp.715-720
発行日 2007年7月15日
Published Date 2007/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100827
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はじめに
ES細胞は内部細胞塊から樹立された細胞株でin vitroでの無限の増殖性と3胚葉全ての系統への分化能を有する.ES細胞は胚様体(embryoid body)と呼ばれる三次元構造を形成させると比較的容易に自動拍動する心筋細胞へも分化することから,胚発生における心臓発生の過程を模倣しうるモデルとして,以前よりin vitroでの細胞分化研究に用いられてきた.さらに,1998年にヒトES細胞が樹立されて以来,再生医療の細胞ソースとしてのES細胞への期待が高まり研究が推進され,ヒトES細胞を用いた研究成果も次第に蓄積されつつある.一方,ES細胞を移植ソースとして再生医療の目的に用いるためには免疫拒絶の問題が最も大きなハードルと考えられている.しかし,このハードルはいわゆる「治療のためのクローニング」を行わなくとも,複数のHLAタイプを有する細胞株を揃えることで解決できるかもしれないと考えられている.実際,中辻らはランダムに樹立した200株のヒトES細胞株があれば,80%の日本人にとってはHLAタイプのワンミスマッチの細胞株がみつかると報告している1).では心臓の再生を考える際に,どのような特有のハードルがあるのだろうか?ES細胞による心臓再生はどのくらい実現可能なのだろうか?本稿では以上の点を中心に論じてみたい.
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