書評
―大野博司 著―感染症入門レクチャーノーツ
田中 和豊
1
1済生会福岡総合病院・臨床教育部
pp.118
発行日 2007年1月15日
Published Date 2007/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100799
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現在,日本の医療界の「感染症ブーム」は,ばい菌の無法地帯とも言える日本で,病める人々をばい菌の魔の手から解放すべく立ち上がった正義感あふれる英雄たちによって作られた.そのきら星のごとく現れた英雄たちの一人が,今回『感染症入門レクチャーノーツ』を執筆された大野博司先生である.大野博司先生は,自主的に学生向けにセミナーを開催するなど精力的な活動をされることで有名な若手医師期待のホープである.彼の初の単独執筆となるこの本はまさに彼の努力の「結晶」である.
あまたある感染症関係の書籍の中で,本書の最大の特徴は,「微生物―抗菌薬・薬理学―臨床感染症」のトライアングルを意識しながら,それを視覚化したことである.著者考案の「微生物ガイド(臨床で重要な微生物を6つに分類したダイアグラム)」と「抗菌薬マップ(その6つの分類の,それぞれどこにどういった抗菌薬が効くかを示した図)」は非常に有用である.「微生物ガイド」は例えてみれば敵の布陣である.また,「抗菌薬マップ」はわれわれの持っている個々の武器の特性を示している.このように敵の布陣と武器の特性を視覚化することによって,感染症との闘いをまるで将棋や囲碁のように理詰めで行うことが可能になる.まさに孫子が言ったように“敵を知り,己を知れば百戦危うからず”なのである.この視覚化以外に,ともすれば羅列に終わってしまう百科事典的な感染症の知識も簡潔にポイントをついてよくまとまっていて,見たい図表や調べたい知識がすぐ探せるのも本書の魅力である.
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