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はじめに
急性心筋梗塞症は突然死する疾患の代表であり(図1)1),その全死亡数の半数以上は病院へ到着する前に心室細動が原因で突然死している(図2)2).急性心筋梗塞症のCCUでの死亡率は最近では10%以下になり(図3),不整脈死はほとんどない.もし心臓発作で倒れたその場がCCUであれば,その人は90%以上の確率で「いのち」が救われる.しかし,そうでなければ,せいぜい5%の確率でしか救命されない.救命するには,倒れたその場がCCUでなければならない.倒れたその場,すなわち地域社会そのものが不整脈死を防止できるCCUに等しい環境であれば,「いのち」を救うことができる.
岩手県は宮澤賢治の精神を継承して,森羅万象,すべてのものとの「共生」を目指している.「岩手流『がんばらない』宣言」は,「共生」の意識である.同じ地域で暮らす人たちがお互いに助け合うのも「共生」である.また,高村光太郎は「岩手の人」で「地を往きて走らず 企てて草卒ならず ついにその成すべきを成す」と詩っている.岩手の県民性は牛のように寡黙でとっつきにくい,かつ素朴でまじめが持ち味という.
この「共生」の意識を持つ岩手県は,県民運動として心肺蘇生法普及事業を地道にまじめに続けている.全国都道府県では最もよく纏まっているものである.現在,さらに一歩踏み込んで,「自動体外式除細動器(AED)の使用を必須とした心肺蘇生法」を推奨し普及に努めている.米国心臓協会(AHA)が国際的な合意に基づいて改訂した「心肺蘇生と救急心血管治療のための国際ガイドライン(ガイドライン2000)」3)に沿って,この「AED使用心肺蘇生法」は世界中が普及に励んでいるものである.
倒れた人のそばに居合わせた人がこの「AED使用心肺蘇生法」を行うなど,同じ地域で暮らす人たちがお互いに助け合って行う救命救急システムを,地域の社会資源の一環として構築できると,「地域社会そのものが究極のCCU」となり,「いのち」を救うことができる.
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