巻頭言
放っておけない若者の睡眠時無呼吸症候群
飛田 渉
1
1東北大学保健管理センター
pp.253
発行日 2007年3月15日
Published Date 2007/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100520
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ヒトの一日は平均して覚醒が16時間,睡眠が8時間からなるサイクルで繰り返されている.したがって,人生の約1/3は眠っていることになる.この睡眠中の時間帯は患者,家族のみならず医療従事者にとっても身体情報を把握し難いブラックボックスである.この時間帯における身体情報を知ることが,いろいろな疾患の病態を知るうえで重要である.その一つに睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndorome:SAS)が挙げられる.本症候群に関する研究は既に1970年代後半より行われていたが,一般の方々に知れわたるようになったのは2003年2月に起こった山陽新幹線運転手の居眠り運転が本症候群によるものであるということが大きな社会問題になってからのことである.
私が睡眠呼吸障害の研究に興味を持ったのは,1981年にアメリカ留学から帰ってから間もなくの頃である.病棟に原因不明の心不全で入院していた患者さんが,わが国でも問題にされつつあったSASであった.ホルター心電図の解析で夜間睡眠時の時間帯に心拍数が周期的に増減していることからSASと推察された.その後,脳波,筋電図,レスピトレースによる呼吸モニター,気管音,心電図など個々のピックアップを寄せ集めて何とか睡眠ポリグラフを記録し,閉塞性の無呼吸が生じていることが明らかになった.当時,SASをスクリーニングする検査はなかったので,故瀧嶋 任先生の音頭取りでホルター心電計と同じように外来で直接無呼吸を検出できる装置を開発しようということになった.サーミスタと気管音による呼吸情報と,心電図による循環情報をモニターできるようにしたのが最初開発されたアプノモニターである.
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