Japanese
English
綜説
心臓リンパ管と心筋疾患
Lymphangiogenesis in Heart Diseases
西尾 亮介
1
Ryosuke Nishio
1
1京都大学医学部付属病院救急部
1Division of Emergency Medicine, Kyoto University Hospital
pp.1325-1331
発行日 2006年12月1日
Published Date 2006/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100505
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はじめに
近年,心疾患における免疫の関与の重要性が明らかとなってきた1,2).しかし,心臓におけるリンパ管の誘導や存在および病態との関連について,分子生物学的また免疫学的観点から行われた研究は極めて少ない.
心筋の浮腫は心不全,心筋炎,高血圧症,心移植などの様々な病態と関連して認められる.この心筋浮腫の重要な成因の一つとして,心臓リンパ管は指摘されてきた3~6).また,心臓浮腫は収縮能,拡張能へ影響を与え,心機能障害との関連が指摘され,慢性的な浮腫は心臓の線維化とも関連があると指摘されてきた7).従来,心臓リンパ管に関する研究は,心膜または心筋内から色素を注入し,心臓リンパ管へ取り込ませる色素注入法が用いられてきた.しかし,この方法にはいくつかの重要な方法論的問題点があった.つまり,1)色素が十分量に取り込まれ,リンパ管に十分に分布しなければいけないこと,2)逆に,静脈などが染色される場合があることなどである.つまり,従来の方法では正確なリンパ管の同定は困難で,心臓におけるリンパ管を正確に捉えるためには,他の方法が必要であった.
20世紀初頭,リンパ管は解剖学的に初めて詳細に報告された.リンパ管新生因子VEGF-C(vascular endothelial growth factor-C)やその受容体VEGFR-3といったリンパ管特異的な新生因子や受容体が発見され,今世紀になりようやくリンパ管のより詳細かつ正確な研究が可能となった.癌のリンパ節転移に関連した研究を中心にリンパ管の研究は行われ,抗リンパ管新生療法などに発展している8~13).
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