Japanese
English
特集 循環器疾患の予防医学
循環器疾患における予防医学の費用対効果
Cost Effectiveness of Preventive Medicine in Cardiology
新保 卓郎
1
,
揚 志成
2
,
茅野 眞男
2
Takuro Shimbo
1
,
Yo Shisei
2
,
Masao Chino
2
1京都大学大学院医学研究科臨床疫学
2国立病院東京医療センター循環器科
1Department of Clinical Epidemiology, Kyoto University Graduate School of Medicine
2Department of Cardiology, National Tokyo Medical Center
pp.7-12
発行日 2004年1月1日
Published Date 2004/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100231
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
予防医学は多くの成果を挙げてきた.例えば,高血圧診療の進歩は本邦での脳出血死亡率低下に貢献しているのであろう.しかし一方では,予防医学はいくつかの問題も含んでいる.例えば,予防医学で用いられる医療技術が本当に有効であり,また安全なのだろうか? 従来,閉経後の女性に対するホルモン補充療法は心血管障害の予防効果があると考えられてきた.しかし,最近これを検討していたランダム化比較試験が,ホルモン補充療法ではむしろ害が大きいことを示し早期中止になっている1).かのSackettは,この研究に対して「予防医学の傲慢」と題するコメントを寄せている2).しばしば,予防医学的な医療技術は有効性が真に確認される前から普及してしまう.そして一度普及するとランダム化比較試験などでその有効性を確認することが困難になってしまう.また,最近の国民医療費の支出増大が問題になるなかで,医療技術の経済的な側面が注目されつつある.予防医学は医療費の支出に見合う成果を十分に挙げているのだろうか.この論文では,循環器疾患の予防に関する問題について論じた.そして予防医学的医療技術の効果の評価における問題について,また費用対効果という経済的な問題について論じた.また個別の問題として,脳ドック,高脂血症治療,経皮的冠血管形成術(Percutaneous coronary intervention,PCI)を取り上げた.
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.