巻頭言
エビデンスはどこに
近藤 哲理
1
1東海大学大磯病院呼吸器内科
pp.459
発行日 2005年5月1日
Published Date 2005/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100051
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気管支喘息の診療が「最近の具合は如何ですか?」「まあまあです」の曖昧な関係から,症状日誌,ついでPEFR(peak expiratory flow rate)測定へと,日々の自覚的・客観的症状の正確な把握が推奨されるようになって久しい.しかし,外来の順番待ちの間にまとめて日誌を記載する患者が存在することは多くの呼吸器科医が述べており,日常診療で日誌とPEFRが十分活用されているかには疑問がある.さらに,PEFRに健保算定がされたために医療機関にはかえって器具代の負担がかかる局面もみられる.研究目的であっても,PEFRは器具によって測定値が変わるために,異なる器具を使用している患者間での数値の比較は難しい.
いくつかの問題を抱えながらも,PEFR測定はガイドラインでも推奨されて,少しずつ喘息診療に浸透しつつある.最近,その普及に伴ってPEFRを過信していないか不安に思うことがある.PEFR測定をしている患者が数えるほどしかいない中規模病院に2年前に異動して,PEFR新規導入の困難さに業を煮やし,安定した喘息患者には肺機能検査(スパイロメトリー)を時々行うことに方向転換した.PEFRが肺機能を正確に反映しないことは理屈ではわかっていた.しかし,実際に比較してみるとPEFRが200l/min台でも自覚症状が少なく肺機能も正常域の患者が少なくない.そこで,検査室のデータを150人分集めて,1秒率(FEV1.0%)とスパイロメトリーで得たPEFRを比較してみた.
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