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本号の扉となる序説を書くにあたり,胃十二指腸に限らず消化管神経内分泌腫瘍について,まずカルチノイド・カルチノイド腫瘍の歴史にふれておきたい.消化管において“カルチノイド腫瘍”という言葉が最初に登場したのは,1907年のOberndorfer1)の報告である.Oberndorferは,低異型度な発育速度の遅い腫瘍細胞から成る,通常の癌腫とは異なる小腸腫瘍があると報告した.この“低異型度な腫瘍細胞”は後に銀親和性を示すことからKultschitzky細胞由来2)とされ,遠隔転移を来すことがある3)ことから悪性腫瘍として認識されるようになった.その後1968年にBlack4)により電子顕微鏡で腫瘍細胞内に神経分泌顆粒(neurosecretory granule)を有していることが報告され,消化管粘膜にガストリン,ソマトスタチン,セロトニンなどのアミンペプチド産生性の内分泌細胞が同定されると,Pearseら5)は1971年に,それらの内分泌細胞は発生学的に神経外胚葉(neural crest)に起源しており,カルチノイド腫瘍はアミンの代謝からAPUD(amine precursor uptake and decarboxylation)系細胞由来の腫瘍(APUDoma)であると報告した.これにより,カルチノイド腫瘍は神経内分泌系細胞の腫瘍,すなわち“NET(neuroendocrine tumor)”であるとの認識が広まることとなった.
一方,Williamsら6)は1963年に,カルチノイド腫瘍は原始腸管から発生した臓器に分布する内分泌細胞に由来し,胎生学的に前腸系,中腸系,後腸系に分類され,各群で組織形態,銀反応性〔銀親和性(argentaffin)と好銀性(argyrophil)〕,および臨床症状に違いがあることを報告した.その後のSogaら7),遠城寺ら8),他多数の報告から,現在ではカルチノイド腫瘍は神経管とは関係ない原始腸管から発生した臓器に分布する内分泌細胞に由来する内分泌細胞腫瘍であるという認識が定着している9).
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