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“特殊型胃炎”という明確な定義はないが,Crohn病に代表される肉芽腫を生じるような胃炎(Table 1)1)を指して用いられることが多い.胃に肉芽腫性病変を認めた場合,結核,梅毒,サイトメガロウイルス(cytomegalovirus ; CMV)などの感染症,Crohn病,サルコイドーシスなどの特発性疾患や,近年注目されてきた炭酸ランタン長期服用による異物反応としての肉芽腫性胃炎を考慮する必要がある.ただし,これらの疾患はHelicobacter pylori胃炎や胃癌を除けばいずれもまれな疾患であり,サルコイドーシスや特発性肉芽腫性胃炎以外の疾患では必ずしも肉芽腫を伴う(胃生検組織にて検出できる)わけではない.また,肉芽腫が検出されたとしても,結核にみられる乾酪性肉芽腫のような疾患特異的な肉芽腫はごく限られているため,これらの疾患の臨床像や画像的特徴を考慮して鑑別診断を行うことが必要である.本稿では誌面の制約もあり,梅毒性胃炎,CMV胃炎および胃サルコイドーシスについて概説する.
近年,梅毒患者の激増に伴い梅毒性胃炎の報告も散発ながら増加傾向にある.梅毒性胃炎は,しばしば心窩部痛を伴い,胃病変は幽門前庭部に好発し,X線像では同部の全周性漏斗状狭窄,内視鏡では易出血性の浅い不整形の多発潰瘍やびらんを呈する.また,時に副病変として胃体部に特徴的な梅毒性皮疹類似の粘膜病変(梅毒性胃粘膜疹)を伴う(Fig.1)ことがあり診断の一助となる.なお,これらの病変は肉芽腫を伴わない早期(第2期)梅毒の胃病変であり,今日本邦では肉芽腫を形成するほど進行した梅毒(第3期)の胃病変に遭遇する機会はほとんどない.鑑別診断としては,同様にまれながら肉芽腫を形成することがあるリンパ腫や,CMV胃炎(後述)などが挙げられる.特に第2期梅毒(梅毒トレポネーマの血行性・リンパ行性の全身播種期)における梅毒性胃炎では全身のリンパ節腫脹を伴い,胃生検組織像も高度の形質細胞浸潤を伴っているため,ここ数年,悪性リンパ腫〔特に表層型のびまん性胃MALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫〕と誤診される症例が散見されているため注意が必要である.
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