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はじめに
本号の表題である「予後不良な早期消化管癌」を目にした際に読者諸氏はどのような肉眼形態や内視鏡所見・病理組織学的所見の癌を想起するであろうか.もちろん,既に進行癌となり,遠隔転移を来した場合に予後不良となることは至極当然と言えよう.この“予後不良な”には,早期癌(T1癌)あるいは小さな腫瘍径にもかかわらず脈管侵襲が高度なものや,既にリンパ節転移や遠隔転移を来し癌死した症例,壁内転移(intramural metastasis ; IM)を来した症例1)2),などという転移リスクの高い病変の意味合いが強く包含される.また,短期間での形態変化とともに推定深達度が増した症例なども含まれよう.さらには,内視鏡治療や外科的切除を施行し,根治した蓋然性が高いと考えられた病変が,その後に想定を覆して再発死亡した症例も当てはまる.本誌を顧みると,早期胃癌の予後に関する特集は,5巻5号の「早期胃癌再発例の検討」,19巻7号の「早期胃癌の再発死亡をめぐって」,28巻3号の「早期胃癌1993」3),53巻5号の「早期胃癌2018」など,何度も繰り返し取り上げられてきた.
一般的に胃や大腸の早期癌は予後良好である4).国立がん研究センターの報告(Webページ5))によると,胃癌と大腸癌の病期別3年生存率(実測生存率/相対生存率)は胃癌88.9%/96.9%,大腸癌89.3%/96.4%とされている.5年生存率も同様に,胃癌81.6%/94.6%,大腸癌83.5%/95.4%と良好である.なお,相対生存率とは,がん以外の死因による死亡などの影響を取り除くために患者集団の実測生存率を,患者集団と同じ性・年齢構成の一般集団における期待生存率で割ることにより算出する生存率を指す.
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