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はじめに
十二指腸腫瘍は比較的まれな疾患であり,特に表在型非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍(superficial non-ampullary duodenal epithelial tumor ; SNADET)の頻度は全消化管腫瘍の1〜2%と言われており,さらに癌に限れば全消化管癌の0.3%程度とされている.この頻度の低さゆえに他臓器のように十分なデータの蓄積がなく,さまざまな混乱を招いている.そもそも以前は,頻度も低く,多くは放置しても問題ない良性疾患と考えられていたため,あまり注目されることはなかった.しかし,近年になり発見される頻度が明らかに高くなっている1).これが,疾患頻度は変わっていないものの,内視鏡検診が普及するとともにSNADETの存在が周知され,より丁寧に観察されるようになったことによるのか,実際に疾患頻度が上昇していることによるのかは現時点では明らかではない.しかし,H. pylori(Helicobacter pylori)罹患率の低下や食事の欧米化に伴い,Barrett上皮やBarrett腺癌が増加してきているのと同様に,十二指腸においても疾患構造が変わってきている可能性が否定できない.
一方で,SNADETに関しては長年経過観察してもほとんど変化のないものが多く,進行癌もほとんどみられないことから治療の必要性は乏しいものと考えられてきた.しかし,多数の症例を積み重ねてみると,腫瘍サイズが大きくなればなるほど担癌率が上がってくることもわかってきた.また,胃癌や大腸癌とは異なり,腺腫から浸潤癌に変わっていく症例はまずないと考えられてきたが,経過観察中に腺腫から癌に変わり,結果的に粘膜下層に浸潤(SM浸潤)して転移した症例もみられている.また,従来言われてきたように十二指腸において浸潤癌の頻度はかなり低いものと考えられるが,いったんSM浸潤を来した場合には高頻度にリンパ節転移を来し,予後不良であることも明らかになってきた.したがって,一生フォローするだけで十分なわけではなく,侵襲の少ない治療ですむうちに内視鏡で切除するという戦略もありうると考えられる.
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