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1992年の「食道癌取扱い規約第8版」1)にて,目立った隆起や陥凹がなく,長軸方向に5cm以上の拡がりを示す表在型癌が,“表層拡大型食道癌”と定義された.目立つ隆起(0-I型)や陥凹(0-III型)がないということは,0-II型が主体の病巣であり,表層拡大型食道癌は表面型の病巣を示していたことになる.今回は,表層拡大型食道癌が表面型の病巣であることを強調するため,敢えて,表面型表層拡大型食道癌とした.本誌でも,1995年の30巻8号で表層拡大型食道表在癌が取り上げられ,表層拡大型食道癌の発育進展や病理学的な特徴が検討された.幕内ら2)は,表層拡大型食道癌の発育・進展に関して,(1) 食道に広範囲に多発する食道癌症例があること,(2) 表層拡大型食道癌の辺縁には上皮内癌の多発病巣が併存すること,(3) 表層拡大型食道癌で網目状に正常上皮の粘膜島を有しているものがあることなどから,ある一定の範囲で多発性に癌化が始まり,次第に増大,癒合して発生する,多中心性広範囲発生説を唱えた.この考えは,現在も支持されており,竹内ら3)の病巣の大きさから,表層拡大型食道癌(5cm以上)と非表層拡大型食道癌(10~30mm)に分けて検討した発育進展に関する報告でも,ほぼ同様の結果が得られている.
病態として問題となるリンパ節転移や予後に関する問題について,吉田4)は,通常の粘膜下層癌と粘膜下層癌の成分を有する表層拡大型病変は変わらず,粘膜下層に浸潤した成分の組織型や浸潤量,浸潤様式が重要であると述べており,幕内ら2)が行った,粘膜癌と粘膜下層癌に分けた検討でも,脈管侵襲,リンパ節転移,予後に関して,差はなかったとしている.しかし,松本ら5)の,第31回食道色素研究会のアンケート集計報告では,浸潤部は多中心的に存在し,導管内進展が多く,脈管浸潤の割合も高いとされている.また,竹内ら3)の報告でも,脈管浸潤陽性,先進部組織型低分化型,浸潤様式INFcは,表層拡大型癌で多い傾向を示していたとしており,少なくとも表層拡大型病変の治療例では,組織学的な検索を十分行うことの必要性が示唆される結果であった.
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