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JDDW(Japan Digestive Disease Week)2013は,10月9日から12日までの4日間,東京品川プリンスホテルなどにおいて開催された.6つの学会がJDDW2013に参加し,例年以上に全国から多くの先生が参加されており,海外からの参加者も目立っていた.われわれの施設では,東京開催の場合,交代で学会に参加しているが,今回は学会印象記を担当することになっていたため,会期中,早朝から学会場を目指し,久しぶりに,ほぼ1日中,発表を聞いていた.どの会場も満員で,立ち見で聴講することも多かった.JDDWの企画では,今後の専門医制度のあり方や日本消化器病学女性医師・研究者の会が開催され,社会への貢献についても議論されていた.日本消化器内視鏡学会総会は,藤田直孝会長(仙台市医療センター仙台オープン病院)の意向により,国際化を目指して,会期中どの時間帯でもinternational sessionが企画されていた.2020年に東京でオリンピック開催が決定したことを機に,われわれももっと“おもてなし”の心で国際化を目指していく必要がある.内容は,実際の診療や臨床研究に役立つ実学のテーマが多かった.日本消化器がん検診学会は,斎藤博会長(国立がん研究センターがん予防・検診研究センター)の意向により,「科学的根拠に基づいたがん検診を目指す」をテーマに,今後のわが国におけるがん検診のあり方を検討する演題が多く,筆者が最も注目している内容が詰まっていた.冒頭で,斎藤会長が,健常者を対象とする検診は,患者を対象とする診療上の診断とは原理・原則が異なり,優れた診断法が必ずしも有効な検診法ではなく,有効性が不明なままにがん検診を行うと,利益よりもむしろ過剰診断をはじめとする大きな不利益をもたらしかねないことと,検診の有効性の判断基準はいわゆるエビデンスであることを述べられ,がん検診の成立条件が,発見効率,予後効率,経済効率の3本柱だったことを思い出した.
筆者が,最も注目していた主題は,2日目の消化器がん検診学会特別企画,深尾彰先生(日本消化器がん検診学会理事長)と芳野純治先生(藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院院長)の司会による「胃がん検診におけるH. pyloriと胃粘膜萎縮によるリスク集約─エビデンスの要約と今後の研究課題─」であった.これまでに胃がん検診において有効性が唯一認められているのは,胃X線検診のみであるが,現在,精度は向上しているものの,受診率が向上しないことや医師のX線離れが指摘されている.そこで,近年,内視鏡検診の有効性を主張する研究者,ABC検診を主張する研究者,ABCリスク分類に基づいた内視鏡検診やX線検診を主張する研究者,従来どおり胃X線検診を主張する研究者たちが,わが国の今後の胃がん検診について議論し続けている.筆者は,胃癌の発生とH. pylori感染に関する研究結果をもとに,わが国の40歳以下の感染率が急激に低下することから,今後は,より効率的な検診を検討していかねばならないと考えているが,対象集約については慎重に検討すべき課題である.そこで,特別企画では,ABCリスク分類によって対象集約ができるかが議論された.吉原,井上,安田,吉澤,後藤田,加藤(敬称略)は,B,C群は胃癌の高リスク群であり,検診対象として検査を行えば発見効率(がん発見率)は向上するが,理論的に胃癌の超低リスク群と推測されるH. pylori抗体陰性かつPG(pepsinogen)陰性の“A群”は,検査が不要と言えるほどに診断できていないことを問題点として挙げており,これは共通した認識であった.その根拠は,A群にX線,内視鏡検査を行うと,萎縮性胃炎を伴っている症例が比較的多く,既感染者(自然除菌?)やH. pylori抗体偽陰性者が含まれているということと,発見胃癌をABC分類で分析すると,A群が10%以上を占めているということであった.つまり,超低リスクとしての“真のA群”の診断のためには,採血でA群と診断されても,X線検査や内視鏡検査で萎縮性胃炎がないことを確認する必要があることから,安田と後藤田は,X線や内視鏡による画像診断だけで十分であると,井上と吉澤は,カットオフ値の再検討も必要であると述べていた.
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