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はじめに
前回,本誌にて虚血性腸病変が特集されたのは,1993年(28巻9号「虚血性腸病変の新しい捉え方」)であり,既に20年が経過したことになる.虚血性腸病変とは,血流障害が主因となって腸管に炎症を生じる疾患の総称であるが,その原因としては全身の循環障害,腸間膜血管の障害,腸管壁の血行障害に至るまで,多くの病態が関与する.また,血圧低下,動脈硬化,血管炎,微小血管のスパズムなどの血管側因子のみならず,便秘などによる腸管の内圧上昇や蠕動運動亢進などの腸管側因子が複雑に絡み合って虚血を引き起こす疾患もある.このため,虚血性腸病変は,虚血の程度や持続時間,側副血行路の有無や形成の程度,当該腸管壁の状態などにより,一過性の虚血性大腸炎に代表される予後良好な疾患から広範な梗塞から成る重篤な疾患に至るまで,幅広く存在する.
これまで虚血性腸病変は,発症形式や病因,障害血管の部位・閉塞の有無,腸管虚血の範囲,その後の臨床経過などのさまざまな観点から分類がなされているが1)~5),炎症に起因するほぼ全ての腸疾患の発生と進展には,少なからず血行障害が関与している.このような観点から,前回の特集において多田ら1)は,“虚血性腸病変は単に血流障害のみによって発症するのではなく,さまざまな原因が複合して発生するものであり,多くの腸疾患は広義の虚血性疾患とみなされるため,本症は虚血性腸病変症候群として捉えるべき”としている.Fig. 1は,当時の多田らが考案した虚血性腸病変症候群の疾患概念をもとに,その後確立した新たな疾患も加味して筆者が改変した虚血性腸疾患分類(私案)であるが,今日でもその概念に大きな修正は必要ないものと考えている.
本特集では,前半で狭義の古典的な虚血性大腸炎と小腸炎における最近の知見と,前回の特集では取り上げなかった壊死型虚血性腸炎の臨床像について,後半で近年疾患概念が明らかとなった,その周辺疾患における診断や治療について論じていただく.
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