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今から10年前といえば大腸fiberscopeが開発されて間もない頃で,器械の改良や挿入手技の工夫などの試行錯誤のすえ,一応の内視鏡診断学が確立された頃であった.その頃すでにX線検査の分野では二重造影法によってfine net-work patternとしての微細診断がルーチンに行われていた.その後,内視鏡検査がX線検査に追いつき,粗大病変の診断学から二重造影法に匹敵する微細病変の診断レベルにまで達したのは,何といっても色素内視鏡検査法の方法論の確立にあったであろう.色素内視鏡検査法が胃の診断学に導人された歴史は古いが,これが大腸内視鏡検査にも応用され,臨床に広く普及して体系だった診断学の中に組み人れられるようになったのは,色素内視鏡研究会が発足した頃である(1974年).
大腸の色素内視鏡検査法は,当初には赤燈色系の大腸粘膜に対照的な青色系の色素液を散布することによって,粘膜面の凹凸を強調する色彩的コントラスト効果を狙ったり,無名溝(innominated grooves)に色素液を溜めて大腸小区像を明らかにして二重造影法のfine net work patternに相当する効果を期待する目的であった(コントラスト法).このため色素液は大腸粘膜より吸収され難いindigocarmineや低濃度のmethylene blueが用いられた.最近では一種の生体染色として腸上皮より色素液を吸収させる目的で,0.2~1.0%の濃度のmethylene blueが用いられる傾向にある(染色法).大腸粘模の無名溝やpitの陥凹部には色素吸収能力はなく,平坦部に吸収力があるため,コントラスト法とは陰陽逆の効果が得られる.
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