胃と腸ノート
Antrumgastritis
高瀬 靖広
1
,
竹本 忠良
1
1東京女子医大消化器病センター
pp.864
発行日 1974年7月25日
Published Date 1974/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403111946
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Antrumgastritisをはじめて取上げたのはKonjetzny1)である.彼は急性胃炎の典型例として,幽門洞に著明にびらん性変化(Puhlのびらん)がみられる例などをあげ,“Antrumgastritis”という言葉を使用しているが,正確に言えば幽門洞という部位ではなく幽門腺領域を重視していた.慢性胃炎においても大体は幽門洞によくおこるとのべ,胃上半部に限局するものはまれで,本来の意味でのびまん性胃炎もAntrumgastritisにくらべて比較的めずらしいとのべている.Konjetzny2)は胃・十二指腸潰瘍の標本を検索し,全例に幽門腺領域に炎症性変化を認めたが胃底腺領域ではみられなかったことなどから,十二指腸と幽門洞とは機能的に一致しているとの考えを持っていたようである.
したがって,Antrumgastritisという表現は普通胃炎性変化が幽門洞または幽門腺領域に限局している場合に使用されると考えられる.しかし,その後Antrumgastritisについての評価はあまりなされなかったといえよう.それは,生検が本格的に内視鏡検査に取入れられるまでは,主に透視下で生検を行っていたために幽門洞からの生検が困難であったこと,内視鏡検査も幽門洞を充分に観察することが容易でなく臨床的に把握することがむずかしかったこと,さらに胃底腺から分泌される酸,ペプシン,内因子のような分泌機能について幽門腺では不明で機能的検査法がなかったことなどによる3).
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