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編集後記
多田 正大
pp.758
発行日 1990年6月25日
Published Date 1990/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403110978
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前号に続いて炎症性腸疾患の鑑別診断,本号は大腸疾患についての特集である.もっともこの疾患は大腸と小腸とで区別して考えることに問題がある.雑誌の編集の都合でこのようになった経緯があるが,前号の序説において白壁が形態診断の要点について触れた精神は本号でもそのまま当てはまるものである.序説で長廻が診断学の立場より大腸炎の鑑別のポイントについて鋭く力説しているが,大腸疾患として捉えるのではなく消化管全体の中での病変としての解釈をすべき,ということが炎症性腸疾患の鑑別診断の基本であろう.また渡辺は主に肉眼病理のうえからの臨床医顔負けの鑑別診断理論を展開しているが,迫力と説得力のある論文であり,読者にとって座右に置いておきたい鑑別の指標であろう.また瀬崎,樋渡論文もポイントを押えたX線・内視鏡による画像診断によって,鑑別診断は容易であることを強調しているが,それにしても主題症例にみられる病変は,わが国のスペシャリストの診断学にかかってもなお鑑別の困難な症例が少なくないことを表している.診断学の精神と実際の臨床の場でのdiscrepancyの表れであろうが,それだけにより適正な鑑別診断の尺度をみつける必要が強調される.なんとも画像診断学の奥の深さ,そして診断学の楽しさを感じさせられた貴重な症例であった.
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