今月の主題 胃の多発性潰瘍
綜説
胃の多発性潰瘍の病理
佐野 量造
1
1国立がんセンター病理部
pp.1175-1180
発行日 1967年9月25日
Published Date 1967/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403110523
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はじめに
十二指腸および胃潰瘍について多くの病理学的研究があるが,胃の多発性潰瘍を中心とした論文は予想外に少ない.
私達が外科材料の検討に当って感じてきたことは,胃潰瘍が単発であるか,多発性であるか,それが臨床的に手術前に診断し得たものかどうかは別問題として,病理学的に発見される多発性潰瘍の頻度は組織学的検索方法にかなり左右されるように思われる.すなわち,肉眼的に明らかに粘膜のひだが集中しているような潰瘍については間違いなく調べられるが,癌の疑いがあって系統的な半連続切片方法の切り出しを行なうと,全く気がつかなかった潰瘍瘢痕を組織学的に認めることがたまたま経験されるからである.胃の多発性潰瘍を論ずるには,一応,この点を念頭におかねばならない.
しかし,実際に当って,すべての良性潰瘍例について胃の全域を切り出すことはなく,やはり肉眼的に認めた潰瘍を含む領域の検索にとどまることになる.
このようにして検索した私達の胃潰瘍の切除材料を中心として,十二指腸潰瘍,胃の単発性潰瘍と対比しながら,胃の多発性潰瘍の特徴を病理学的に追求してみることにした.
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