主題症例をみて
潰瘍性大腸炎に合併する癌の診断上の問題点
長廻 紘
1
1東京女子医科大学消化器病センター
pp.996-999
発行日 1986年9月25日
Published Date 1986/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403110219
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まず感ずるのはなぜもっと早い時期に癌,あるいは前癌病変(dysplasia)の診断を下し,手術にもっていけなかったという点である.多くの例でかなり(年の単位)前にX線上明らかな異常所見が認められている.全く気付かなかったか,あるいは気付いてもまさか,と思ったとしか考えられない.
長期経過した潰瘍性大腸炎(UC)に癌やdysplasiaが高率に合併することは消化器病の診断に携わるものにとっては常識となっているが,目本では非常にまれということも不必要なまでに信じ込まれていた.(本号の企画に関しては時期尚早という声もなくはなかったが,日本での常識に挑戦しようとの意味で取り上げられた.)そういった日本ではまれという思い込みが無意識のうちに働いて,あまり突っ込んだ検討をすることの妨げになったのかもしれない.
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