- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
US,CTを中心とした最近の非侵襲的検査法の発達と普及に伴い,肝・胆・膵領域の診断と治療は,まさに日進月歩の勢いである.これまでにUS,CTの解説書は数多く出版されているが,従来の検査法であるERCPやSAGとの関連のもとにUS,CTを有機的に組み合わせた解説書は数少ないのが現状であった.しかし今回,打田日出夫教授が編著された「肝・胆・膵―確定診断への画像的接近と診断手技の治療的応用」が上梓されたことは,誠に時宜を得たものである.本書の特徴は,第1部の“肝胆膵診断確定への画像的接近”と第2部の“放射線診断法の治療的応用”の両者のタイトルに端的に表されている.第1部では個々の症例を通して各種画像診断法を駆使した画像的接近が多くの鮮明な写真で明快に述べられており,同時に各画像の持つ有機的な組み合わせの必要性と重要性が,ひいては各種検査法の長所と欠点をも明らかにしており,読者は自ずと,個々の症例を通して著者らが意図した有機的診断大系の必要性を教えられることになり,誠に興味深い.また呈示された症例は第一線で常日ごろ扱うような症例が大多数であり,この意味でも第一線の臨床医にとっては日常臨床に今すぐにでも役立つものと思われる.
第2部では著者らが現在最も力を入れているinterventional radiologyについて最先端の業績が詳細に記載されており,本書の持つ斬新さが見事に結実している.すなわち閉塞性黄疸例におけるPTCドレナージの内痩化とこれを応用した放射線腔内照射や胆管拡張術の方法や成績にとどまらず,現在最も注目されている肝癌の肝動脈塞栓術について,これまでの著者らの成績が明快に述べられている.肝動脈塞栓術についての詳細な手技や方法,適応,成績が述べられており,われわれ外科医にとっても非常な関心領域でもある.著者らの成績では生存率は1年が43.5~60.5%,2年が30.3~39.3%ときわめて良好な成績を残しており,手技や方法に学ぶべき点が多い.更に著者らは,この肝動脈塞栓術を肝切除例の術前に応用して,肝切除後の遠隔成績を向上すべく努力がはらわれており,今後の発展を願ってやまない.
Copyright © 1984, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.