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第69回日本消化器病学会総会は,大阪市立大の山本祐夫教授を会長に,4月11日から3日間,ロイヤルホテル(9会場)とロイヤルNCB会館(2会場),合わせて11会場で開催された,総会の前日には1日中降り続いた雨も上がり,総会の3日間は好天に恵まれ,まだ雪の残る寒い北海道からはるばるやってきた筆者には誠に快適な3日間であった.学会に当てられた2つの建物の間の距離が短く,会場探しのために地図を広げながらウロウロすることもなく便利であったが,何しろ,11会揚での発表が同時進行なので,聞きたい演題発表の時間が重なることもしばしばあり,これも大きな学会につきものの宿命とあきらめなくてはならない.いかにたくさんの演題を“消化”するかに努力された主催者の御苦労が偲ばれた.
本総会で膵に関する発表は,一般演題が50題とポスター29題の合わせて79演題であり,その中から筆者の印象に残ったものについて触れてみたい.学会2日目,膵(肝疾患との相関)のセッションでは,高橋達氏(新潟大)が,アルコール性肝障害例の膵病変にっいて,膵外分泌の機能,形態の両面から種々検討したところ,ERCPでは異常を認めないが,高率にPFDの異常低値がみられたという.従来のアルコール肝障害と膵障害が共存しないという既成概念に一石を投じたものと評価したい.今後この観点からの検討が期待される.膵腫瘍マーカーに関する発表は13題あり,POA,CEA,RNase,Ferritin,Elaetase Ⅰなどの膵癌診断の有用性についていろいろな角度からの検討がなされた.残念ながら現在のところ肝癌におけるα-Fetoproteinのような地位を占める特異性の高い膵腫瘍マーカーは見当たらない.しかしながら,新しい消化管腫瘍関連抗原CA-19-9のRIA(国立がんセンター,大倉ら)や糖蛋白体分析による膵癌診断の試み(昭和大,柳沢ら)など,今後の研究の発展を期待したい.このほか,ヒト膵癌培養細胞を用いての,細胞遺伝学的研究(京都府立大,森田ら)やマウス単クローン性抗体作製の試み(東北大,小針ら)など,膵癌に対する新しい基礎的アプローチとして評価したい.
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