胃と腸ノート
食道の白斑,いわゆる“glycogenic acanthosis”
小林 世美
1
1愛知県がんセンター第1内科
pp.692
発行日 1983年7月25日
Published Date 1983/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403109473
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1967年,私がシカゴ大学で食道ファイバースコピーを始めたころ,同僚が食道の白色斑点を“leukoplakia”とか“hyperkeratosis”と呼んでいるのを聞いた.それは決してまれなものでなかったことを思い出す.1970年日本へ帰ってみると,食道の早期癌が関心の的になっていた.その早期病変とはどんなものか,あるいは前癌病変はどんなものかが私の関心事となった.
leukoplakiaと言うと,子宮頸癌の前癌状態として有名である.食道の白斑もシカゴ大学でleukoplahiaと呼ばれていたし,古い文献では確かにこのような白斑をleulcoplakiaとかhyperkeratosisと呼び,前癌状態と考えられ,また口腔内のleukoplakiaに似ていると言われている.さて,この白斑は本当に前癌状態なのだろうか.その当時私は,この自斑を片っぱしから生検し,follow-upすることが食道の早期癌を見付ける1つの方法かもしれないと考えていた.しかしながら,生検の病理レポートでは,著変なしと報告されることが多く,異型性を示唆する所見は得られなかった.初めに考えたようにどうも前癌病変などではなさそうだと気付きはじめたが,その後もその内視鏡所見を,つい“leukoplakia”とレポートに記載する習慣を持ち続けたのである.
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