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編集後記
福地 創太郎
pp.1018
発行日 1983年9月25日
Published Date 1983/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403109375
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早期胃癌診断学の進歩も微小癌やⅡb病変が爼上に上がってから既に久しい.確かに5mm以下の微小癌が臨床的に診断される例やⅡb症例も多数報告されている.しかし,臨床的に発見された微小癌は全く氷山の一角にすぎず,隆起や陥凹の明らかな例や色調の変化を認める特殊例にすぎないし,ⅡbもⅡbもどきの類似Ⅱbが大部分である.やはり,この辺に現在の診断学の進歩の最前線があるのだが,実際の臨床の場では,それ以前に,まだまだいろいろな落とし穴を抱えている.スキルスの早期発見の困難性の問題1つ取り上げても,進歩の最先端だけ見て喜んでいられないのが,実際に臨床の第一線に従事する者の実感ではないか.今回,早期胃癌の特集号の企画に当たって,あえて“早期胃癌診断の問題点”としたのは,そういう感慨を込めている.丸山氏の臨床診断の実態に関する論文は,従来公表されているきれいごとの早期胃癌の臨床診断成績の背後に隠されている実態を顕わに曝露しただけに,衝撃的かもしれない.しかし,これはかつて沖中重雄教授が発表した教室の誤診率16%という数字が一般社会に与えた衝撃と比べて,それでも低い.誤診率算出の基準は何かと考えた医師の反応のように,日々X線や内視鏡で悪戦苦闘している医師にとっては,さほど驚くべき実態ではないかもしれない.しかし,私にとっても意外だったのは,診断基準がそれぞれの施設でかなり異なることである.いずれにしても,この問題はスクリーニング検査と第2次以降の検査の在り方について,重要な問題提起であろう.
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